大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)1047号 判決

主文

第一審判決中有罪部分及び原判決を破棄する。

被告人を懲役一〇月に処する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

本件公訴事実中、昭和二二年政令第一六五号違反の事実については被告人を免訴する。

理由

弁護人笠島永之助上告趣意第一点について。

所論の各点は控訴趣意書において主張されず、したがって原審の判断を経ていないところであるから、いずれも上告適法の理由とならない。

同第二点について。

被告人が国選弁護人の選任を請求していたとしても(この点は控訴趣意書に記載してあるのみでその他に書類はない)、原審は、控訴趣意書提出最終日の五日前に弁護士原田武彦を国選弁護人に選任し、同弁護人は控訴趣意書を提出し、自己と被告人提出の各控訴趣意書に基いて異議なく弁論しているのである。したがって憲法三七条に違反するとの所論はその前提を欠くものであるから論旨は採るを得ない。

しかし職権をもって調査するに、被告人が法定の除外事由がないのに、昭和二四年四月二八日頃肩書自宅において連合軍占領物資である中古メリヤスシャツ一枚タオル二筋製袋一個を所持していたとの公訴事実(第一審判決判示第二の事実)については、昭和二七年政令第一一七号により大赦があったので、刑訴四一一条五号、四一三条但書、三三七条三号により第一審判決中の有罪部分及び原判決を破棄し、被告人に対し、右公訴事実については免訴の言渡をなすべきものである。

よって、第一審判決が証拠により確定した右大赦にかゝわらない有罪部分の事実(第一審判決判示第一及び第三の一、二の事実)を法律に照すと、判示第一の事実は刑法二五四条、罰金等臨時措置法二条三条に、判示第三の一、二の事実は刑法二三五条に各該当するから、判示第一については所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条、一〇条により重い第一審判決判示第三の一の窃盗の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一〇月に処し、訴訟費用につき刑訴一八一条に従ってその全部を被告人に負担させるものとする。

よって主文のとおり判決する。

この判決は裁判官一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例